だいあろぐ
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1998/10/18 (Sun) [長年日記]
§1 ボクの人生を変えた男
今日はちょっと昔話。
Alliances が出てしばらくしたころ。研修期間を終え、今の部署に配属になったころです。
当時のボクは、今からでは信じられないくらい Magic に対して情熱を失っていました。それまで一緒にやってきた友人が、卒業とともに離れてしまった*1のが最大の要因かもしれません。
もともと実力なんてありませんでしたが、プレイする機会を失ってどんどん弱くなり、後から始めた友達にも勝てなくなっていました。もう弱すぎ。
負けず嫌いのボクにとって、これはかなり屈辱でした。正直キライになりかけていました。
このままではいけない。そう考えたボクは、メーリングリストに参加し、なんとかがんばってみようと努力しました。
そんなある日のこと。
研修で本社に行く機会ができ、ついでに噂のデュエルスペース"ハイパーアリーナ"に行ってみようと思い立ちました。事前に情報だけはきちんと仕入れて。
さくさく研修は終わり、愛用のデックを持っていそいそと新宿へ向かうボク。さんざん迷ったものの、ML の人に教えていただいた地図を片手に、なんとかたどりつくことができました。
意気揚揚と乗り込んだボクを待っていたのは、無人のデュエルスペース……。
なすすべもなく、ボクは部屋の奥でぼーっと過ごすことに。「わざわざ新宿まできて待ちぼうけとは」かなりショックです。
そんなときでした。彼が来店したのは。
暇を持て余していたボクは彼に対戦をお願いしました。彼は快く応じてくれました。
……しかし勝てない。わかっていたけど勝てない。弱いボクのデック。
そのあまりの弱さを見かけたのか、10 数回ボクを叩きのめした彼がこう告げました。
「ボクのと交換してやってみましょうよ」
借りた彼のデックはよく動きました。しかし、それでも彼は強かった。今まで弱かったボクのデックがまるで見違えるような動きをしていたのです。
そうして対戦を終えてから、彼はボクのデックを分解し始めました。
「このカードで勝ったことありますか?」
「このカードを唱えたことはありますか?」
一つ一つボクに質問しながら、彼はボクのデックをチューンしてくれました。10 分ほどして再構成されたボクのデックは、見違えるようによく動くようになりました。
「なんでこんなに動くようになったんですか?」
「マナのバランスが悪かったんです」
それからは楽しかった。時間の経つのも忘れてデュエルしました。
ふと気がつくと周りには人が集まっていました。そこでボクは席を立ちました。去り際に自分の名を名乗り、そして彼の名を尋ねました。
「山口竜太郎です」
彼がこの年の日本代表の一人だったことを知ったのは、後日のことです。
このときチューンしてもらったデックをベースにしてからは、地元では負け知らずになりました。勝つ喜びを感じることができるようになったのです――。
あれから 3 年。
環境は変わり、多くのカードが発売され、気がつけば大きな大会を運営しているボクがここにいます。それなりに腕も上がり、それなりの成績を残せるようになりました。
そのボクの主催する大会に彼が参加していました*2。
対戦する機会はなかったけれど、ジャッジをしながら彼のプレイを見ました。あのころの思い出がふと脳裏をよぎりました。
気がつけば、後戻りできない場所まできた自分に気づく。そのことを後悔したことはない。
ボクにここまでこの世界の素晴らしさに気づかせてくれたのは、間違いなく彼である。
ボクが Magic で師匠と呼ぶ人は、ただ一人……。楽しさを教えてくれてありがとう。
